伊勢神宮の吉川竜実さんに学ぶ「神道」縄文意識覚醒アート―⑭神奈川沖浪裏―(七)

「神道ことはじめ」コラム

「縄文意識」とは、己が生業なりわいに全力で勤しみ、無我や没自然の境地となって真の自己を解き放ち、あるがままの姿で自由に生き切っていく意識のこと。=0意識(私=0=∞)=ゼロ・ポイント・フィールド。

吉川さん:岡本太郎が最も理想とした社会や文化とは、一万年以上にわたって自然と共生し継続した「縄文文化」だったのではないか、という結論を先にお伝えしました。

それは明らかに太郎が政治や経済はもとより「芸術」と「呪術」とが渾然一体となって自然の一部として人の暮らしが営まれた〝縄文文化〞を示唆し憧憬しょうけいしていたと考えてほぼ間違いはないと思われるからです。

そしてその意識を体現してあらゆる芸術活動に取り組み展開していったものと捉えて良いと思っています。太郎をして「縄文意識の体現者」と見られる所以ではないでしょうか……。そのように感じさせられる太郎の主張を以下にご紹介しておきたいと思います。 

現在の文明が自然のバランスを破壊し、危険な、破滅の方向に向かっていることは疑いようがない。

ぼくは世界の各地を旅行して、いわゆる先進諸国よりも、むしろ経済的な意味での後進国の方に限りない魅力をおぼえる。GNPは低い。人々はぎりぎりに生きている。しかし、ふくらんでいる。

彼らの生活、現在の精神状況にふれ、また過去の文化の遺産をてらしあわせてみても、はっとするほど豊かで高貴なものを感じとる。もし人間性を言うなら、そこにこそなまなましい人間の息吹がある。

人類は不思議な運命を負うて進んできた。他の動物とはまったく違った、矛盾にみちた道。直立歩行して手を使うようになり、知能が発達して、驚異的な文明をひらいて行った。それは確かに、輝かしい栄光にみちた足跡だったが。しかし、いわゆる文明の進歩とともに、人間の生き方は次第に厳しく引き裂かれはじめる

大自然のなかに木の実を拾い、鳥・獣を追い、魚・貝を採って食べる生活から、農耕という技術によって、自然を改造して豊かな食糧を生産する。やがて産業革命。大規模な機械生産。それに応じた社会の近代化。
    ( 略 )

人間文化の歴史というものは確かに、まず環境、自然との闘いであった。しかしぼくはとりわけ素朴な古代文化、それを通しての人間像にふれるとき、これこそ〝自然〞ではないかという思いにつかれてならないのだ。

大地のひろびろとした拡がり、清冽な流れ、生い茂る樹木、あるいはそびえ立つ山と、……そしてその中に闘い、生き貫いた人間文化。それはともに〝自然〞である。ぼくに言わせればむしろ人間という〝自然〞の方が、一だんと濃い彩りのようにさえ思える。

そういう純粋な、たくましい自然としての気配から人間文化を引き離してしまったのは、いわゆる科学主義、合理主義であり、そしてその上に立った産業革命である。実はつい先頃といっても、より近い過去なのだ。ぼくはいつもそれを強烈に感じつづける。
(「〝爆発〞の秘密」(『自分の中に毒を持て』より))

ぼくはこう考える。コミュニケーションを拒否するコミュニケーションをこそ人間存在の真ん中に主役としてすえなければいけない。情報化社会だからこそ、単なる理解を超えた超情報にもっと敏感に、真剣になるべきだ。ここで、とりわけ無目的な情報を提供する呪力を持った「芸術」の意味が大きく浮かびあがってくる。

人間社会には原始時代から社会構成の重要な要素として「呪術」があった。超越者との交流、それは社会生活の根源であり、政治、経済はそれによって支えられていた。呪術は目的的のように見えていながら、人間の非合理的なモメントにこたえ、逆にいのちの無目的的な昂揚を解き放つ力を持っていた。

ところが現代社会では、呪術の目的的な役割だけが科学技術によって受けつがれ、拡大されている。もう一つの、混沌と直結し、超越と対話する、人間存在の根源の神秘の力に通じる面は、無価値のように顧みられない。

また宗教はかつての力を失い、絶対感を喪失してしまった。それを今日生きかえらせうるのは「芸術」であろう

芸術は呪術である。というのがぼくの前からの信念だ。その呪力は無償のコミュニケーションとして放射される。無償でなければ呪力を持たないのだ。
(「自分を笑ってごらん」(『自分の中に毒を持て』より))

(波線は編集部による)


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吉川 よしかわ竜実たつみさんプロフィール
皇學館大学大学院博士前期課程修了後、平成元(1989)年、伊勢神宮に奉職。
2016年G7伊勢サミットにおいて各国首相の伊勢神宮内宮の御垣内特別参拝を誘導。通称“さくらばあちゃん”として活躍されていたが、現役神職として初めて実名で神道を書籍(『神道ことはじめ』)で伝える。

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