繰り返される歴史の波を乗り超えるカギ「今こそ、美しくあれ!」

コラム

毎年恒例の新春対談。株式会社船井本社の舩井勝仁社長に2024年の展望についてお話を伺いました。

舩井 勝仁ふない かつひとさん

1964年 大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役。2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。有意の人の集合意識でミロクの世をつくる勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けている。近著に「智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能」(竹田和平・小川雅弘共著)、「日月神事的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る」(中矢伸一共著)、「聖なる約束3 黙示を観る旅」(赤塚高仁共著)がある。
舩井幸雄.com
にんげんクラブ

繰り返す歴史の前で何を為すべきか

近藤太郎(以下、近藤)コロナウイルスは少し落ち着いてきましたが、世界ではまだ戦争をしている国もあり、心が休まりません。2024年はどんな年になるとお考えでしょうか?

舩井勝仁さん(以下、舩井さん):「トム・ソーヤーの冒険」で知られる、作家のマーク・トウェイン氏の「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」という言葉の通り、これまでの歴史をなぞるような出来事が起こるのではないかと考えています。

歴史は「80年周期で繰り返す」や「100年周期で繰り返す」と諸説あります。例えば、1918年から1920年にかけてスペイン風邪が大流行し、1923年には日本で関東大震災が起こりました。それから世界恐慌、満州事変、日中戦争、太平洋戦争、敗戦……と激動の数十年間が訪れます。

スペイン風邪から100年後の2020年にはコロナウイルスがまん延し始め、2023年には世界で天災や戦争が起こっています。そうすると、これから数年かけて戦時中から戦後のような状況に陥っていくのではないかと指摘する人もいます。

こう言うと後ろ向きな未来を想像されるかもしれませんが、そんなことはありません。この大混乱を乗り切っていくにはどうすればいいか、皆さんで考えることが大事になってきます。世の中は「集合無意識」でできているので、多くの人が「これから世界は悪くなる」と思えば悪くなっていくのです。

「大難を小難に、小難を無難に、無難を無事に」という言葉の通り、トータルさんは、大難を小難に変えてきたと思います。とっくの昔に地獄のような時代に突入していたのでしょうが、トータルさんのような会社が啓蒙などを続けたことで大難が小難で済みました。しかし、そろそろこの5年くらいは厳しい世界へ変わっていくでしょうね。

近藤:いよいよ、そういう覚悟が必要になってきますね。

舩井さん:要はサバイバルですよね。日本は戦争で当時の人口の約5%にあたる310万人の犠牲を出しましたが、反対に言うと残り95%の方は生き残りました。戦後、サバイバルしてきたのです。特に女性は強かったのです。このように、ナイフ一本を持って生き残るサバイバルではなくて、本質的に「生きる力」を身につけることが大切です。

なかでも、特に大事だと思うことが二つあります。

一つ目は、「自分で考えること」。SNSでは人の意見を引用や再投稿して、そのまま流すような人もいます。そういうときに、自分はどう考えるのか。これが大切です。他人の意見を参考にするのはいいんですが、それを自分なりに消化して自分の言葉に書き直して発信すること。「こんな恐ろしいことが起こるから知らせなくては」と、善意で発信している人がほとんどだとは思いますが、その善意や正義感ほど危ないものはありません。

コロナ禍の「自粛警察」は、まさにそうですよね。県外からやってきた停車中の車に、県をまたぐ移動を自粛するように張り紙をしたり、マスク着用やワクチン接種を強制するような書き込みをしたり。それぞれの考えがあってやっているので、人に押し付けたり否定したりするのではなく、いろんな情報を得たうえで自分はどうするのかを考える必要があります。

近藤:いろんな情報に惑わされず、自分の意見を持つ必要がありますね。

舩井さん:そうですね。そして、二つ目は「分からないことを分からないと言うこと」ですね。私は最近、この格好(スーツにネクタイ着用)で講演に行くのですが、あえて「スーツを着ている人のことを信用してはいけません」と言っています(笑)。

こういう格好をしているからと言って簡単に信用せずに、分からないことは聞くようにしたほうがいいですね。

太郎社長はいわゆるスーツ姿になるのを抵抗されているかもしれませんが、本質的にはこういう格好をしている方(官僚、大企業の社員、大学の教授など)とは違う生き方や経営をされていますよね。こういうスーツを着ているような人の言うことでも、これからは分からないことがあれば分からないと言いましょうということです。

そういえば、昔トータルさんの社風に感動したエピソードがありました。

10年ほど前に、私が『未来から考える経営』という本を出したときのことです。トータルさんの元社長でもある青木敬司さんを含めて5人の経営者に登場していただいた本なのですが、そのなかで、トータルさんはクレームが来たら喜ぶとお聞きしました。クレームに対して謝罪するだけでなく、お客様やメーカーも巻き込んで、どうすればもっと良くなるか考えて改善していく。

損得や利益よりも、どうすればいいかを本当に考えている。それができるのは日頃から元気の力を広めるという使命を考えて仕事をしているからだと思います。お客様は、絶対にトータルさんのファンになりますよ。

近藤:たしかに、クレームが来た後にファンになってくださるお客様はいらっしゃいます。

人間にしか生み出せない「美意識」を磨く

舩井さん:私が「スーツを着ている人の意見をあまり聞いてはいけない」と気づいたのは、福島の原発事故のときに聞いた話がきっかけです。

原発の安全性について説明する際に、あえて「私の言っていることをご理解いただけましたか?」と聞くそうです。すると相手は分からないと言いづらくて「それくらい分かりますよ」と、つい言ってしまう。「分からないので、私でも分かるようにかみ砕いて説明してください」と言えるかどうかです。

まず考える習慣をつけると、分からないことを分からないと言えるようになります。分かり始めると、自分で考えられるようになる。

しかし、矛盾するようですが社会はどんどん考えなくていいような方向に加速していくと思います。思考はAIがどんどん代替していくでしょう。

コンサルタントが言うには、5年もすればコンサルタントという仕事はほとんど無くなる。今コンサルタント数人が1ヶ月数千万円でやっている仕事を、AIが30分30万円ほどでやってしまうようになる。物を考える代表的な仕事であればあるほど、AIに代替される可能性があるということです。

放っておいたら、どんどん考えないようになってしまいます。昔、地図は覚えるしかなかったので一度通った道を忘れないようにしていたものですが、カーナビが誕生してからはすっかり道が覚えられなくなってしまいました。今後もこの流れは加速していくと思います。

こうして、人間は「機能」を外部化してきました。AIは「脳」を外部化することなので、AIの台頭によってこれからどんどん考えなくなっていきますよね。分からないことも分からないと言わずにいると何も考えなくなるのは間違いありません。

では、人間はどうすればいいかと言うと、最後に残るのは「美」です。「真善美」の「美」と言ってもいいですね。美はAIが代替しにくい部分であり、宗教や哲学にも通じる部分です。昔は「人生とは何か、愛とは何か」などを考える機会がよくありました。ビジネスは稼ぐか・稼がないかの二択ですが、「美」はそうではありません。美意識を醸成することが、先ほどもお話ししたサバイバルの第一歩ではないでしょうか。

物理学者の友人から聞いた話では、彼らが考えた理論物理学を30年以上かけて実験物理学が証明するそうで「長生きしないと理論物理学ではノーベル賞が取れない」と言われているそうです。また、ノーベル賞を受賞するような本質的な理論は美しいそうです。みんながすぐに理解できるシンプルさがある。やはり美しくあることが本質であり、この美意識を磨いていくことが今から目指していくべき方向になると思います。

近藤:これからの時代のカギが、私たちの中にある「美意識」を磨いていくことだったのですね。来る新時代を「美意識」と共に乗り越えていきたいと思います。本日はありがとうございました。

(文責:松本 有樹)

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