神道ことはじめ 特別連載  「縄文文化と神道 Vol.13 -竪穴住居②-」

「神道ことはじめ」コラム

縄文の人々のつくる住まいや集落には明確なデザインがあり、
信仰と叡智に支えられた慣習があるようです。
そしてその精神は伊勢神宮の式年遷宮へと受け継がれ……。

(前号に続く)

吉川さん:さて、縄文の人々がつくる集落(ムラ)の建造物には、典型的なデザインと配置があります。

まず中央にお墓や環状列石が設けられます。次にその周りには祭りや集会に使用される広場があって、それを取り囲むように人々の暮らしを維持するのに必要不可欠な食料や資材を貯蔵収納するための高床式倉庫や埋穴があります。

更にそれらの周囲を個々人が暮らしを営む竪穴住居を建て並べて、同心円状のデザイン配置が形成されています。

竪穴住居の出入口は採光のためを考えるならば、普通は南や東向きにあってもよさそうです。ところがすべての住居の出入口は中央のお墓や環状列石のある方向へと向けられているのです。

同心円状のデザイン空間の中でムラの人々が生活するにあたって、そこには何か結界的なものを張り廻らすような縄文文化の信仰と叡智ともいうべき根深い慣習が感じられてなりません。

そして縄文の人々にとっての住居とは元々「仮住まい」のものであると考えていたらしく、その耐用年数は約20年であったといわれています。

それから住居の中央またはやや奥には必ず囲炉裏があって土器が据えられ低温の火が絶えず焚かれていたことは先述しましたが、その意味についても知里氏から教示を受けた田中氏は次のように述べています。

家に魂をもたせるためには炉の中に火を焚かねばなりません。新しい家にはじめて火を焚くことをチセ・ラマチ・ア・コレ(家に魂をもたせる)といい、炉に対する点火がいかに家に生命を吹き込むために必要か、を語っています。 (『縄文のメデゥーサ』より)

つまりアイヌ民族の囲炉裏への点火の意味するところは家に魂をもたせることにあったと報告されていますが、このことは大変重要な指摘であると思います。

また縄文の人々の平均寿命はおよそ30歳くらいで、成人男性の頃に新築の住居を構えたのではないかと推測されています。

このようなことから勘案すると、縄文文化においては営々と約1万年以上にわたって集積されてきた経験や知識に基づき息づいてきた信仰や慣習というものがあって、その一つには「住居は約20年を寿命とする」という信仰がおそらくあったのではないかと類推しています。

ところで伊勢神宮では20年に1度大御神の住まいである神殿を建て替え、殿内の調度品である神宝も作り替えて奉飾し、大御神を新しいお宮へお遷し申し上げる「式年遷宮」が約1300年前から行われています。「式年遷宮」の「式年」とは定められた年という意味で、古代から中世にかけては「20年(内)に1度」を式年とし、近世に至ってからは「20年ごとに1度」を式年とするようになりました。


(次号に続く)

吉川 よしかわ竜実たつみさんプロフィール

伊勢神宮禰宜・神宮徴古館・農業館館長、式年遷宮記念せんぐう館館長、教学課主任研究員。2016年G7伊勢サミットにおいて各国首相の伊勢神宮内宮の御垣内特別参拝を誘導。通称“さくらばあちゃん”として活躍されていたが、現役神職として初めて実名で神道を書籍(『神道ことはじめ』)で伝える。

★吉川竜実さん著書『神道ことはじめ』の無料お試し読みプレゼント★

知っているようで知らないことが多い「神道」。『神道ことはじめ』は、そのイロハを、吉川竜実さんが、気さくで楽しく慈しみ深いお人柄そのままに、わかりやすく教えてくれます。読むだけで天とつながる軸が通るような、地に足をつけて生きる力と指針を与えてくれる慈愛に満ちた一冊。あらためて、神道が日本人の日常を形作っていることを実感させてくれるでしょう。

下記ページからメールアドレスをご登録いただくと、『神道ことはじめ』を第2章まで無料でお試し読みいただけます。また、吉川竜実さんや神道に関する様々な情報をお届けいたします。ぜひお気軽にご登録くださいませ♪

タイトルとURLをコピーしました