【コラム】きれいな歯で健康に!

コラム

口腔内にトラブルが発生すると、なんとも陰鬱な気分になるもの。
「歯と口の健康習慣」のある6月は、「自分の歯」があることのありがたさに意識を向けていきたいですね。
口腔ケアの大切さを謳い続け、その研究に人生を捧げておられる、大人気歯磨き剤『バイオペースト』開発者である岩月 淳いわつき じゅんさんにお話を聞きました。

株式会社アルラ 代表取締役
岩月 淳いわつき じゅん

昭和39年、愛知県生まれ。1992年に株式会社トータルヘルスデザインに入社し、2008年、同代表取締役に就任。2011年に独立、株式会社アルラを設立。人や環境にやさしく、豊かな社会生活を創造するために有益な情報を広く世に伝えることをモットーとし、主に健康食品・化粧品の開発、健康住宅づくりのコンサルティングを行う。アルラチベット医学センター顧問、一般社団法人国際和合医療学会常任理事、健康住宅研究会主催、内閣府認証NPO法人生活安全支援センター賛助会員なども務める。

失ったら戻らない!「自分の歯」の大切さ

ある雑誌の調査で、著名なシニア100人に、「40代からケアしておくべきだったと後悔している体の部位」について尋ねたところ、過半数が「歯」と答えたそうです。
虫歯や歯周病、知覚過敏を患うと、その痛みや治療による抜歯で、人生において大きな楽しみの一つである食の体験を、存分に味わえなくなります。
歯のありがたみというものは、失ってみて初めてわかるものなのかもしれません。

【図1】は2016年に厚生労働省で行われた全国調査(歯科疾患実態調査)における一人あたりの歯の数(一人平均現在歯数)を、年齢階級別に示したものです。
後期高齢者(75歳〜)では、本来持っている歯の数(28本)の半数近くが失われています(後期高齢者で20本以上の歯を持つ人は46%)。

歯周病を患うことで、健康面にも大きなリスクがあることは、たびたびお伝えしてまいりました。
厚生労働省による平成28年の「国民健康・栄養調査」では、糖尿病が強く疑われる人は約1000万人、その可能性を否定できない人を合わせると約2000万人にのぼると報告され、歯周病と糖尿病は、それぞれが一方を誘発する危険因子であるとの研究結果があります。

歯周病を患うことは、糖尿病だけではなく、全身疾患の危険因子とされ、動脈硬化性冠動脈心血管疾患といった重大疾患に至るまで、発症リスクを持つということにつながるといわれます。
プラークコントロール(※)をはじめとする、私たち個々人による口腔ケアの習慣化は、健康に生きていくための基盤というべきものなのです。

※プラーク=歯垢(しこう)を取り除き、口内環境を正常に保つこと。口内に蓄積したプラークがゼロとなる「プラークフリー」な状態の確立を目的とする。

しかし今、歯を守ることについて、正しい知識を伝える機関がありません。
歯科衛生士の方々が教えてくださるブラッシング法は、やはり実践することできれいに磨けるようになるので、日々の歯磨きのモチベーションを高めてくれます。

しかしそれ以外の重要なところ、たとえばどんな歯磨き剤を使用すべきなのか、歯磨き以外にもどんな習慣が歯を護ってくれるのか、口腔内と体内の菌叢の関係などについては、ほとんどがなおざりの状態です。
歯磨き剤を変えるだけでプラークスコアが減っていくような現実があっても、「たかが歯磨き」と、歯科医ですらそこに目を向けない現実に驚くようなこともありました。

その理由の一つが、現在の保険制度にあります。歯磨きによる予防が主役ではなく、歯を抜いたり治療したりというところで初めて保険が発生し、それで医院が維持できるような制度では、歯科教育も技術も、トラブルが発生し
てからの対処法ばかりが発展していくことになるでしょう。

本来歯科は、歯が痛くなってから通うものではなく、気づきにくい歯周病や虫歯の発生を軽度の段階で食い止められるよう、3ヶ月に1回検診に行く、という場所であるべきなのです。
歯科医師の中にはできるだけ虫歯や歯周病を作らせない、未病対策を熱心に行っている方もいらっしゃいます。
こういう方々が医院を存続できるような制度が導入され、国民が皆、健康な歯、健康なからだを維持できる国となるよう、願ってやみません。

歯は、「食」という人間の生命を維持するためになくてはならないものを噛み砕き、栄養を取り入れやすくするという大切な器官です。
「元気な暮らし」の読者の皆さんもこの6月、健康な歯がある、ということへのありがたさと口腔ケアに目を向けてお過ごしいただければと思います。

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