毎年恒例の新春対談。株式会社船井本社の舩井勝仁社長に2022年の展望についてお話を伺いました。
舩井 勝仁さん
1964年 大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役。2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。有意の人の集合意識でミロクの世をつくる勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けている。近著に「智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能」(竹田和平・小川雅弘共著)、「日月神事的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る」(中矢伸一共著)、「聖なる約束3 黙示を観る旅」(赤塚高仁共著)がある。
舩井幸雄.com
にんげんクラブ
船井勝仁さんの「2022年・未来予測」
近藤太郎(以下、近藤):勝仁さんの未来予測は新年の恒例になりましたが、本年はどのような年になるとお考えでしょうか?
舩井勝仁さん(以下、舩井さん):今年は、組織の力に頼るのではなく自分の能力を磨いて個人で生きていくような、「風の時代(※1)」らしい在り方が加速するような年になるでしょうね。同時に、コロナ禍の影響も相まって、会社という“組織”の存在価値は薄れていくと感じています。
1つの会社に定年まで勤めるのが一般的だったこれまでは、同僚と飲みに行って上司の悪口を言ったりしながら結束力を高め、没個性で価値観を均一にすることが求められてきました。そうした“阿吽の呼吸”の能力が日本の会社の強さをつくる有効な手段でもあったのです。しかし、年功序列・終身雇用などの存続が難しくなってきた今は、「個人で生きていく能力」が必要となり始めています。
また、家族の在り方も大きく変わりました。今は結婚しない人や子どもを産まない「おひとり様」が増え、それに伴って最期の在り方も積極的に在宅死を選んでいくような価値観へと変わってきています。葬儀の在り方にしても、ヒューマンコンポスティング(※2)や樹木葬(※3)などを選ぶ人が増え、お墓を代々守らないといけないという発想も薄れつつあります。
何が言いたいかというと、会社や家族、お墓の在り方といった「絶対これだけは揺るがない」と思われていたものさえも、これからは変わっていく可能性があるということです。
(※1)西洋占星術で約20年に1度起きる時代の節目。形あるものや目に見えるものに縛られない生き方や、型にはまらないことに価値が置かれるといわれている。
(※2)土に還し、微生物などの自然の分解に委ねる埋葬のこと。
(※3)墓石の代わりに、桜やハナミズキなどの樹木(シンボルツリー)の周りに埋葬すること。
近藤:それは、“より人間らしくなっていく”ということなのでしょうか?
舩井さん:おっしゃる通りだと思います。人間って、生まれて、物を食べて排泄して、恋愛して、子どもを産んで育てて、やがて老いて死んでいく。単純に言えばこれだけが人生で、そのシンプルさにだんだん戻っていくように思うのです。同時にそれは、“余計な物を必要としなくなる”ということでもあ
るでしょう。
これまでは、「水道哲学(※4)」のように物質という豊かさを全ての人に行き渡らせるために製造業とそれを支える人材が必要でした。しかし、物が十分に行き渡って、貧困をなくすために一生懸命に働くことが達成されてからも、「もう少し給料が上がったら、より豊かな生活ができる」と思わせるようなインフォメーションがメディアやSNSによって流され、「そのためにはもっと頑張らないと」とさらに物を作り、作ってしまったからマーケティングの力で売るというループができてしまったように思います。しかし今、ミニマリストやシェアリングをする人々が増えていることが示唆するのは、「私たちは人間性を失ってまで、もうやらなくてもいいことを無理にしなくていい」ということではないでしょうか。
これからは、トータルヘルスデザインさんが扱う「元気の力」、いわば「宇宙創生の力」という本物だけが残り、それ以外の物は必要とされなくなるように感じています。そして、我々がしているようなマーケティングもいらなくなるような気がしています。そういうことがよく見えてきたのも、コロナ禍があったからかもしれませんね。
(※4)松下幸之助の経営哲学で、水道水などのインフラを低価格で良質に大量供給し、全ての国民に容易に行き渡るようにしようという思想。
幸せに生きられるヒントは自我と自己にある。
近藤:「持つ」ことから「持たない」ことへ価値観が移っていくような、社会の構造自体が形を変える激しい変化の中にいますね。そんな中で、私たち一人ひとりはどう変わり、何をしていけばいいのでしょうか?
舩井さん:そのヒントを、友人の物理学者は「意識力を上の次元に持っていくと幸せに生きられる」といいます。それは、自我を確立し、さらにその上の、大いなる存在である自己を意識することなのだと。
自我の確立とは、自分の個性を認識して主体性を持って言動し、自分で責任をとれるようになることです。その上で会社の意思、日本の意思、全人類の意思などより大きな全体性を意識すれば、「自分という人間は集合的無意識という大きな存在の中に生きるひとつの細胞と同じなのだ」ということが分かります。
自分自身の細胞で例えると、料理中に右手が間違って包丁で左手を切ってしまっても左手は右手に復讐などしませんよね。でも、今の人類はそれをしてしまっているんです。そこを、「本来の私たちはそうじゃない」ということに人類全体が気づいていかないといけないし、先に気づいた人は“先駆者”として周りをリードしていかなければいけないと思います。今までは、人よりも先に情報を得ることによって良い暮らしができて、分かりあえる人とだけ共有していればよかったかもしれません。しかし今後は、全人類の幸せを考えながら日々の暮らしを営んでいくといった心構えや言動が求められるでしょう。
具体的には、“スーパーで牛乳を買う時に消費期限が短いものから買う”といったようなことです。みんながそうすれはフードロスのない社会をつくっていけるでしょう。また、自分のためだけに使っていたお金の1割くらいを世のため人のために使っていく人が増えれば、自然と困った人のためにお金が使われるような世界へ変わっていくのではないでしょうか。
大事なことは、こうした行動を黙ってやることです。「こんな良いことをした人にどうしてやればいいか?」と神様を悩ませるような陰徳を積んでみてください。びっくりするくらい自分に良いことが返ってきます。
それからもう一つ大事なことは、人よりも先に情報を知っているからといって、その情報を他人に押し付けたり、やらないことを批判するなど、他人を攻撃していないか、自らの行動を省みることです。いかなる真実があるにせよ、いろんな価値観の人がいることを忘れないでほしいと思います。
これを読まれている方は先駆者の方々だと思うので、ぜひ先にあげたような行動をしてみてほしいと思っています。私たちは微力ではありますが、集合的無意識をうまく集めることができるようになると強大な力になっていくはずです。そして、そのことをはっきりと感じられるような年にもなっていくでしょうから、自分の行動によって何が変わったかを感じていくことも、2022年のテーマになると思っています。
いずれ全人類が「右手と左手は同士なのだ」ということを理解する時が来たら、戦いのない時代がくるでしょう。それがおそらく、弥勒の世と言うのだろうと思います。
近藤:大切なのは意識、そして自分の行動が世界を変えていくことを自覚し実践していくことが重要ですね。本日も貴重なお話をありがとうございました。
(文責:重清京子)