神道ことはじめ 特別連載  「縄文文化と神道 Vol.12 -竪穴住居①-」

「神道ことはじめ」コラム

環境に則しつつ通気性に富み、理に適った縄文時代の住まい。その空間でどのように暮らしていたのかを紐解くと、人々の精神性が垣間見えるようです。そのあり方は私たちが日常で交わす挨拶のなかにさえ、そっと姿を潜ませているのかもしれません。

吉川さん:縄文時代の人々は「竪穴住居たてあなしきじゅうきょ」と呼ばれる住まいで暮らしていました。

竪穴住居とは、地面に広さ約10畳×深さ50〜80㎝程度のくぼみを掘って半地下とし、その中に直径約20㎝ぐらいの複数の柱を立て、その頂部をはりでつないで放射状に垂木たるきをかけて樹皮で覆い、保温性のある土葺きや通気性の良い茅葺き屋根を施した住まいのことです。

半地下のため土の温度が17~18℃と一定で、柱にする木材の根元を焼いて炭化させることで防腐効果を持たせ、部材となる各木の長さに合わせて土の深さを調整するなど居住性と耐久性を高めつつ建てられていた工夫が随所に見られています。

屋根の形状は、地面まで葺き下ろした「伏屋ふせや式」が主流で、壁立かべたち式は大型住居に限られる傾向にあったようです。

その平面の形態は四角形や楕円形も用いられていますが、円形が最も多く約80%の確率で採用されています。そして掘り起こされた土砂を利用して、住居のまわりに土手を作り、中に水が浸入しない工夫がなされています。

そして、必ず住居の中央部には囲炉裏いろりが設けられ低温の火が絶えず焚かれていました。

これは住居内の湿度調整と信仰上のためだったと推測されており、料理は基本的には野外で行われていたといわれています。

一棟あたり十人ほどの一族体系の男女が共に暮らす妻問婚つまどいこんと呼ばれる形式で夫婦は別々に住み、その子供は母親の一族として育てられたといいます(=母系制社会)。

『日本書紀』巻十五の顕宗天皇即位前紀清寧天皇二年十一月条には、弘計王おけのみこ(後の第23代顕宗天皇)が囲炉裏に座る主人の縮見屯倉首しじみのみやけのおびと新室にいむろの宴で室祝むろほぎの立舞をされた描写が記載され竪穴式住居の暮らしぶりを窺うことができます。
 

それから人の暮らしの延長線上に神祭りはあるとよくいわれます。神武天皇が丹生の川上において斎行された天神地祇を祭る顕斎うつしいわいを行われた時に

「其の置ける埴瓮はにへなづけて、厳瓮いつへとす。又火の名をば厳香来雷いつのかぐつちとす。
水の名をば厳象女いつのみづはのめとす。又粮くらいものの名をば厳稲魂女いつのうがのめとす。
たきぎの名をば厳山雷いつのやまつちとす。草の名をば厳野椎いつののづちとす」

(『日本書紀』巻三神武天皇即位前紀)

と名付けられ尊ばれたことに象徴されるように、きっと縄文の人々も食事を調える際には神々のご神徳を仰いでいたことでしょう。

ところでアイヌ民族の言語学者・知里真ちりま志保しほ氏は、屋根を「チセ・サバ(家の頭)」壁を「チセ・ツマム(家の胴)」屋内を「チセ・プソル(家のふところ)」、また家の構造材を「精霊の骨格」葺かれた萱を「精霊の肉」と、アイヌでは住居を精霊の身体に見立てていることを語られています(田中基氏たなかもとし著『縄文のメデゥーサ』)。

神道でもこれに類似するかのごとく「大殿祭おおとのほがい祝詞」(『延喜式』収載)には、宮殿の造営に使用された各部の木材関係は屋船久久遅命やふねくくちのみことが司られ、また屋根に関しては屋船豊宇やふねとよう気姫命けひめのみことが司られていることが見られ、その屋内空間を大宮売命おおみやのめのみことが坐されて守護されていることが確かめられます。

今もわれわれ日本人は他人の住居や部屋を訪問した際に玄関先や出入口で「ごめんください」や「お邪魔します」、また退出の時には「お邪魔しました」とよく挨拶しますが、これはその家の主人や家族のみに挨拶をしているのではなく、おそらく屋内空間に坐す神々にも挨拶しているのではないかと思えてならないのです。

(次号に続く)

吉川 よしかわ竜実たつみさんプロフィール

伊勢神宮禰宜・神宮徴古館・農業館館長、式年遷宮記念せんぐう館館長、教学課主任研究員。2016年G7伊勢サミットにおいて各国首相の伊勢神宮内宮の御垣内特別参拝を誘導。通称“さくらばあちゃん”として活躍されていたが、現役神職として初めて実名で神道を書籍(『神道ことはじめ』)で伝える。

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