神道ことはじめ 特別連載  「縄文文化と神道 Vol.7 -土器2-」

「神道ことはじめ」コラム

神道の源流、縄文文化。荘厳な自然界のあらゆる存在に宿る神性を讃えて生きる、その精神性は今も私たちの中にひっそりと息づいています。前号に引き続き「土器」のテーマを深めてまいります。

吉川さん:粘土などを成型し焼成したものを「焼き物」と総称します。

焼き物の主な原料である粘土を高温で加熱すると成分の一部がガラス化して土の粒子を結び付け、石のような性質となるのを焼成といいます。

焼き物の構造は素地きじ釉薬ゆうやくとに分かれます。

釉薬はわらなどの草木の灰に長石や珪石けいせきを砕いた土石類を混ぜて水に溶かしたもので「うわぐすり」とも呼ばれます。

これを焼き物にかけると(=施釉せゆう)表面がガラス質に覆われて耐久性と耐水性とが向上します。

焼き物の種類は成分の違いから生じるガラス化の度合いや焼く温度によって、①土器・②炻器せっき・③陶器・④磁器の四種類に大別されます。

①土器は精製されていない粘土が主原料で、800℃程の野焼きによって焼成された施釉のない素焼きの器のこと。縄文土器や弥生土器が相当します。

②炻器は陶土とうどと呼ばれる鉄分を多く含む精製された粘土が主原料で、轆轤ろくろを使って成形され、穴窯や登り窯によって約1200℃で焼成されます。ここに釉薬の有無は問わず(薪の灰が自然に釉となる自然釉が施される場合もある)、古墳時代の須恵器すえきをはじめ信楽焼や備前焼・常滑焼が有名です。

③陶器は陶土が主原料で施釉されており、炻器と同じ約1200℃の窯焼きによって焼成された器で、萩焼や美濃焼・唐津焼に代表されます。

④磁器は長石や珪石が主成分の磁土じどが主原料で、1300℃以上の高温によって焼成されており、有田焼や伊万里焼・瀬戸焼が著名です。

日々の暮らしの中で縄文の人々は土器を食器や調理具として使用したのをはじめ草木の種子を貯蔵したり、或いは食料や衣料の加工品を作る際など多用していますが、とりわけ神々や祖先たちを祭るのに必要不可欠な祭器具として取り扱われたのは重要です。

この祭器具として土器を重用することによって、初代神武天皇はご東征のクライマックスである大和国やまとのくにの平定を果たすことができました。

すなわち『日本書紀』巻三の神武天皇即位前紀戊午年九月条に、神武天皇は難敵であった大和国の豪族たちを制圧するにあたり、その国魂くにたまのご神徳の宿った天香山あまのかぐやまの社のはにつちを採取し土器を作って、天神地祇を祭る「顕斎うつしいわい」を挙行されたご効験によって、無事にご宿願を成就されたことが記されています。

また同書巻六の垂仁天皇三十二年七月条には、皇后の日葉酢媛命ひばすひめのみことの陵墓に埴で人や馬などを形作った埴輪はにわてて葬祭そうさいを営んだことが述べられています。

そして今も縄文土器の伝統をひく「カワラケ」と通称される素焼きの土器を使って伊勢神宮の祭りは営々と斎行されています。

『皇大神宮儀式帳』(804年成立)に見られる「土師器作物忌はじのうつわくりのものいみ同父すえの」と「陶器作内人うつわつくりのうちんど」が多気郡有爾郷うにごう(=現多気郡明和町蓑村)で焼成し神祭りに供した故実を継承し、同地にある神宮土器調製所において年間12 万個にも及ぶカワラケが調製されているのです。

お伊勢さんにて大御神に祈りと感謝を捧げて
山の幸や海の幸、お酒や塩などがたくさん
お供えされます。このお供えに使われる器が
カワラケです。

吉川 よしかわ竜実たつみさんプロフィール
皇學館大学大学院博士前期課程修了後、平成元(1989)年、伊勢神宮に奉職。
2016年G7伊勢サミットにおいて各国首相の伊勢神宮内宮の御垣内特別参拝を誘導。通称“さくらばあちゃん”として活躍されていたが、現役神職として初めて実名で神道を書籍(『神道ことはじめ』)で伝える。

★吉川竜実さん著書『神道ことはじめ』の無料お試し読みプレゼント★

知っているようで知らないことが多い「神道」。『神道ことはじめ』は、そのイロハを、吉川竜実さんが、気さくで楽しく慈しみ深いお人柄そのままに、わかりやすく教えてくれます。読むだけで天とつながる軸が通るような、地に足をつけて生きる力と指針を与えてくれる慈愛に満ちた一冊。あらためて、神道が日本人の日常を形作っていることを実感させてくれるでしょう。

下記ページからメールアドレスをご登録いただくと、『神道ことはじめ』を第2章まで無料でお試し読みいただけます。また、吉川竜実さんや神道に関する様々な情報をお届けいたします。ぜひお気軽にご登録くださいませ♪

タイトルとURLをコピーしました